木製ケースの6m QRP SSB トランシーバー(JR8DAG-6SSB2008W) 〜 暖かみのある質感をめざしたトランシーバー 〜

2008.07.30新規作成 / 2020.04.20URL変更 / 2023.08.28更新
ハムフェア2008自作品コンテスト自由部門優秀賞第三席

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 ◎ はじめに
 本作品は外観に木製のケースを使用した6m QRP SSBトランシーバーで、JR8DAG-9と同様に6mSSBをQRPで自在に楽しむことが出来る実用性を確保しつつ、木材特有の暖かみのある質感を出し、作品そのものをインテリアとして楽しむことが出来ることもめざしました。本作品には、2008年にJR8DAGが製作したSSBトランシーバーという意味合いで「JR8DAG-2008SSB」という名称を付けましたが、2021年6月に実施した改修によって外観が変わったことから、他の作品(JR8DAG-6AM2020WJR8DAG-40AM2015など)に合わせる形で名称を変更しました。新しい名称は2008年に製作した木製(Wood)ケースの6mSSBトランシーバーという意味合いで「JR8DAG-6SSB2008W」としました。本作品はハムフェア2008自作品コンテストに出品し、自由部門優秀賞第三席に入賞することができました。

 ◎ 本作品の主な特徴
 本作品の主な特徴は以下のとおりです。
(1)外観を木製ケースとして暖かみのある質感を演出。ケースは北海道に自生するホオノキ材を使用して製作。
(2)ケースの強度を確保しつつ、メンテナンスのしやすさ、移動運用等の使い勝手を考慮した結果、内部を容易に引き出せる構造を採用。
(3)周波数・電波型式はEs等の交信が楽しめる50MHz,SSBで、QRP運用を楽しむ観点から出力は200mW。受信は交信に必要な性能(感度、選択度、周波数安定度等)を確保。周波数可変はVXO(可変水晶発振)を採用し、50.150〜50.300MHzを運用可能。水晶は交換可能とすると共に、2ch分をスイッチで切り換えられるようにして、水晶交換なしで運用できる周波数を拡大。
(4)大きさは幅200mm×高さ70mm×奥行180mm(突起物除く)。電源を内蔵して移動運用時の使い勝手を向上。重量は電池込みで1,030g。

 ◎本作品の概要
 木製ケースは北海道に自生するホオノキ材を使用して自作しました。パネルは強度確保のためプリント基板を使用しましたが、木材に比べて濃い茶色に塗装することで、外枠ケースとの調和を図りました。メインパネルと部品を実装した基板は背面のネジ1本を回すことで取り出すことが可能であり、電池や水晶の交換を容易に行えます。
 受信部は高周波増幅1段、中間周波増幅2段のシングルスーパーヘテロダイン方式、送信部は平衡変調を行ったのちにクリスタルフィルターを使用してSSBを発生させ、終段に2SC2053を使用し、送信出力は200mWです。ICを多用することで使用する部品点数を減らし、FCZ基板を多用した表面実装を行っています。

 ◎ 製作における工夫点など
 強度の不足しがちな木製ケースで、運用時に必要な強度や実用性を確保することが本作品の大きな命題でした。木製ケースの大きさは強度確保の他に、移動運用時の可搬性、入手できた板の大きさなどを考慮して決めました。10年以上の長期間にわたって安定した運用を行うため、回路はJR8DAG-9をベースに目新しさよりも動作の安定性を重視した回路設計を行いました。電池や水晶交換、回路のメンテナンスを行いやすくするため、部品の表面実装や内部を外側のケースと独立して引き出せる構造を採用しました。

 ◎ 内蔵電池を単4型から単3型へ変更(2020年4月10日)
 容量が小さく電池ケースに独特な加工が必要だった単4ニッケル水素電池8本から、市販の電池ケースが発売されている単3ニッケル水素電池8本に変更するための内部の改装を行いました。JR8DAG-6AM2020Wと同様に、高ナットと基板を利用して、内部後方上部の空いた空間に単3ニッケル水素電池8本を内蔵しました。単3ニッケル水素電池8本への変更により、電池使用時の運用時間の向上、市販の単3電池8本用ケースを使用した容易な電池交換が可能となり、移動運用での使い勝手が向上しました。

 ◎周波数カウンター増設に伴い外観を変更(2020年6月28日)
 JR8DAG-6AM2020Wと同じように周波数カウンターの増設を行うため、パネルを新たに作成し、これまでのパネルと交換しました。合わせて、パネルの塗装色もJR8DAG-6AM2020Wと同じ濃い茶色に変更しました。また、VXOは水晶の交換を必要とせずに運用周波数を拡大するため2チャンネル化し、トグルスイッチで水晶を切り換える回路を追加しました。以上の改修によって外観が変更したことにより、本作品の名称を「JR8DAG-2008SSB」から「JR8DAG-6SSB2008W」に変更しました(名称の付け方はJR8DAG-6AM2020W等に合わせました)。

 ◎ 使用感など(2023年8月27日現在)
 2008年より運用を開始し、2023年3月16日現在で国内全エリア、JD1(小笠原)、韓国の894局と交信でき、Es伝搬を利用した1,000km以上の遠距離交信もできています。受信は感度はメーカー機より少し劣る感じですが、選択度、安定度なども含めて6m QRP SSB交信には十分な送受信性能があります。送信の変調は交信に十分な音質であるとのレポートをいただいています。内部を引き出しやすい構造は、運用において電池や水晶の交換がしやすい点で非常に有益でした。周波数カウンタの搭載と水晶の2ch化は、水晶を交換をせずに約300kHzの範囲が運用可能になったことと、運用周波数の把握がしやすくなったことなど、使い勝手の向上につながりました。

 ◎ おわりに
 金属ケースとは違う木材特有の暖かみのある質感がありながら、受信感度や送信音質については6m QRP SSB運用に必要なレベルを確保しており、運用周波数も使用頻度の高い範囲がカバーしています。暖かみのある質感と6m SSBをQRPで十分に楽しめる実用性を兼ね備えたトランシーバーが製作できたと思っています。本作品を使用して6m SSB QRP運用を楽しみたいと思います。

◎本作品の概要動画を作成(2022.10.10更新)
 本作品の概要を動画で作成し、ニコニコ動画およびYouTubeに投稿しました。リンクは以下のとおりです。
木製ケースの6m QRP SSB トランシーバー(JR8DAG-6SSB2008W)(2022.10.10) - ニコニコ動画(YouTube投稿版はこちら)


木製ケースの6m QRP SSBトランシーバー(JR8DAG-6SSB2008W)で交信してみた(2022.10.15) - ニコニコ動画(YouTube投稿版はこちら)


木製ケースの6m QRP SSB トランシーバー(JR8DAG-2008SSB)(2020.05.25) - ニコニコ動画(く)(YouTube投稿版はこちら)
木製ケースの6m QRP SSB トランシーバー(JR8DAG-2008SSB) - ニコニコ動画:GINZA(2016.04.16公開のバージョンです)

JR8DAG/菅野 正人(KANNO Masato)

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 【コンテンツ】

回路図(2022.10.31,約65kB)

作品概要(ハムフェア2012ブース展示用説明分,2012.11.23,PDF形式,約270kB)

回路設計の考え方(2022.06.10更新)

外観の様子(2023.01.22)

内部の様子(2023.04.07)

自作品コンテスト提出書類(2008.08.07,PDF形式)

自作品コンテスト展示用説明文(2008.08.07,PDF形式,約174kB)

動作試験の測定データ(2008.09.23,約98kB)

出品にあたって考えたこと(2009.01.01)

自作品コンテスト賞状(2008.08.31,約95kB)

入賞カップと並べた作品(2008.09.09,約139kB)

【2021年6月27日までのトップページ】6m QRP SSBトランシーバー(JR8DAG-2008SSB)

【更新情報】

更新情報 は再下段にあります。
JR8DAG-2008SSBの外観
JR8DAG-6SSB2020Wの外観
中央に周波数カウンターを追加.パネルの色は薄い茶色から濃い茶色に変更.(以前の外観はこちら)
大きさ 200(幅)× 70(高さ)×180(奥行)(単位 mm , 突起物を含まず)
(撮影:CANON EOS Kiss X7 画像編集:Paintgraphic4Pro)

JR8DAG-2008SSBの系統図
JR8DAG-6SSB2008Wの系統図


 ◎コンテスト入賞履歴等(2009.04.28現在)
 2009年以降の入賞記録は現在までのQRP記録のページをご覧ください。
・2008.10.11  第29回全市全郡コンテスト電信電話部門シングルオペ50MHzバンドQRP北海道1位
・2008.08.23 ハムフェア2008自作品コンテスト自由部門優秀賞第三席
・2008.04.28 第50回ALL JAコンテスト電信電話部門シングルオペ50MHzバンドQRP北海道1位


【JR8DAG-2008SSBの定格】
[共 通]
周波数 50MHz
電波型式 SSB(J3E)
使用半導体 5IC 6TR 9FET 13Di
電源電圧 DC 9.0(V)(標準)
消費電流
受信無信号時 60(mA)
送信最大時 130(mA)
空中線インピ-イダンス 50(Ω)
外形寸法 200(幅)× 70(高さ)×180(奥行)
( 単位 mm , 突起物を含まず)
重量 1,030(g)(単3ニッケル水素電池8本込み)
局発発振方式 可変水晶発振
発振周波数 38.800〜39.050MHz付近(使用する水晶による)
[送信部]
終段入力 9.0(V)× 50(mA) ≒ 450(mW)
出力 200(mW)
終段石 2SC2053
不要輻射 -40(dB)以下
変調方式 平衡変調
[受信部]
受信方式 シングルスーパーヘテロダイン方式
中間周波数 11.272MHz
受信感度 0dB(uV)程度 (S/N 10dB)
選択度 ±1.1kHz(-6dB),±2.4kHz(-60dB)程度


【更新情報】
2023.08.28 使用感の記述を更新
2023.04.07 内部の様子のページを更新
バーニアダイヤルの取り付けの様子の写真を更新
2023.03.17 使用感の記述を更新
2023.01.22 外観の様子のページを更新
背面の様子の写真を追加
2022.12.11 外観の様子のページを更新
正面からの様子の写真を追加
2022.11.11 使用感の記述を更新
ページ全体の記述を修正
2022.10.31 回路図を更新
10μFの電解コンデンサ4個(TA7358P周辺、AGC)をすべて積層セラミックコンデンサに変更
AGCの時定数調整のため10μFと並列に接続している抵抗 470kΩ → 220kΩ
低周波電力増幅回路の安定性を向上させるため、TA7368Pの電源ラインの電解コンデンサ100μF → 220μF
2022.10.21 本作品による交信の様子の動画を作成しニコニコ動画およびYouTubeに投稿
2022.10.10 本作品の概要動画を作成しニコニコ動画およびYouTubeに投稿
2022.06.10 回路設計の考え方のページを更新
VXO回路の安定性向上、低周波電力増幅回路(TA7368P)の回路修正、2021年に行った水晶の2ch化と周波数カウンターの増設に関する記述を修正
2022.05.31 回路図を更新
・トランスバーターの回路定数を以下のとおり変更し、VXO発振と送信出力の安定化、および送信時に周波数カウンターの表示が不安定になることに対処
 Q124 ソース抵抗 10Ω → 47Ω(流す電流を減らしてVXO発振を安定化)
 Q125 ソース抵抗 10Ω → 4.7Ω(VXO発振回路の出力低下を利得増加によって補償)
 局発出力の送受信へ接続している抵抗 470 → 100Ω(周波数変換への入力増加と周波数カウンターの送信時おける表示不安定を解消)
 励振段Tr221(2SC1906)のエミッタ抵抗100Ω → 47Ω(利得を増やし送信出力を安定的に増加させる)
 終段Tr222(2SC2053)のエミッタ抵抗10Ω → 4.7Ω(利得を増やし送信出力を安定的に増加させる)
2022.03.31 回路図を更新
・ボリュームを上げると発振するような症状が発生することがあったため、低周波電力増幅回路(TA7368P)の周辺の回路を修正。
 入力のコンデンサ 1μF → 0.1μF、1番ピンの0.047μF → 4.7kΩ
 ICへの入力を減らしたことと、抵抗をつないで入力インピーダンスを下げたことで動作が安定した模様
2022.02.14 使用感の記述を更新
ページ全体の記述を修正
2022.01.11 回路設計の考え方のページを更新
2021年に行った水晶の2ch化、周波数カウンターの増設に関する記述を追加
使用感の記述を更新
2022.01.01 回路図を更新
 VXOの動作の安定化を図るために、VXO回路の回路定数を変更(L8との結合コンデンサ 100pF → 10pF、VXOコイル(L7)に3pFを並列に接続など)
 送受信の周波数変換に接続する抵抗を1kΩ → 470Ωに変更(入力を調整)
ページに「周波数カウンター増設に伴い外観を変更」の項目を追加、その他、ページ全体の記述を変更
2021.09.10 回路図を更新
 周波数カウンターの増設により局発の信号を周波数カウンターに送る抵抗を追加
 水晶の2ch化を実施
定格を更新
2021.08.31 内部の様子のページを更新
内部の様子の写真2枚を新しいものに差し換え
2021.08.20 内部の様子のページを更新
内部の様子の写真1枚を新しいものに差し換え
2021.08.10 内部の様子のページを更新
内部の様子の写真1枚を新しいものに差し換え
2021.07.29 外観の様子のページを更新
外観の写真の1枚を新しいものに差し換え
2021.07.18 外観の様子のページを更新
外観の写真を新しいものに差し換え
2021.06.28 作品の改修によって外観が変わったことを機に作品の名称を他の作品に合わせる形に変更
JR8DAG-2008SSBJR8DAG-6SSB2008W
2021.06.03 使用感の記述を更新
2020.10.22 使用感の記述を更新
ページ全体の記述を修正
2020.05.25 本作品の概要動画を作成しニコニコ動画に投稿
2020.05.20 外観の写真 の2枚目の内部の様子を引き出した写真を差し換え
電池を単3ニッケル水素電池に変更したことにより定格を修正(重量810g → 980g)
ページ全体の記述を修正
2020.05.04 内部の様子に電池を実装方法の写真を1枚追加
2020.04.23 内部の様子に電池を実装方法の写真を追加
2020.04.12 内蔵電池を単4型から単3型に変更するための内部の改装を実施したことにより、内部の様子の写真を更新
使用感の記述を更新
2019.03.14 使用感の記述を更新
2017.03.14 トップページに使用感の記述を追加。
おわりに を更新
その他、全般的な文章を修正
2016.04.17 ニコニコ動画に本作品の概要動画を投稿
2015.01.01 内部の様子にバーニアダイヤルの取り付けの様子を追加
2012.11.23 ハムフェア2012のブース展示で配布したパンフレットに掲載している作品概要を掲載
2011.06.26 回路図修正
送信時の発振対策として、バランスドモジュレータIC(TA7358P)の低周波増幅の入力(2番ピン)に0.01μFのコンデンサを追加
2010.05.29 回路図修正
VXOの水晶を変更したことに伴い、回路定数を修正
川崎電波のVXO用水晶 → (株)NSI社の特注品に変更。
VXO用でないため水晶の両端に1pF追加。2連バリコンの片側しか使用していなかったので、2連を並列に接続
【特注した水晶と運用周波数】  
19.500MHz  50.100〜50.250MHz
19.525MHz 50.150〜50.300MHz
19.550MHz 50.200〜50.350MHz
19.575MHz 50.250〜50.400MHz
19.600MHz 50.300〜50.450MHz
2009.04.28 回路図修正
LEDインジケータの点灯感度を改善するため以下のとおり部品を変更
 2SK241のソース抵抗1kΩ → ダイオード1S1588
2009.01.01 自作品コンテスト出品にあたって考えたこと を新規作成
2008.10.11 回路図修正
終段2SC2053ベースのバイアス抵抗 470Ω → 390Ω(電流値を調整)
終段の動作安定化(発振防止のため)2SC2053のエミッタに0.1μFの積層セラミックコンデンサを追加
2008.09.23 回路図修正。
終段の動作安定化のため2SC2053のエミッタ抵抗4.7Ω → 10Ω
2SC2053ベースのバイアス抵抗 330Ω → 470Ω
動作試験の測定データを掲載
2008.09.09 入賞カップと並べた作品の写真を掲載
2008.08.31 回路設計についてを掲載
2008.08.31 自作品コンテスト賞状を掲載
2008.08.07 自作品コンテスト提出書類を掲載
2008.08.07 自作品コンテスト展示用説明文を掲載
2008.07.30 外観・内部の写真を形成
2008.07.30 回路図を掲載
2008.07.30 ホームページ作成